2008年 12月 17日
今年の9月になってブログを見られた京都のK様からメールをいただき,おもわぬ展開に話が進んでしまいました。 珍しい観察例だと言うことでBIRDER誌に投稿したところ,1月号に掲載されることになりました。 研究者の詳しい考察も書いていただき,面はゆいような記事になりましたが, 投稿原稿はかなり削られていますので以下に原文をアップしておきます。 "ツツドリのルリビタキへの托卵巣立ちヒナ観察記 " という題名になります。 2005年06月19日のことです。 初夏の大台ケ原は,繁殖期を迎えオオルリ,コルリ,コマドリなどの小鳥やカッコウ,ホトトギスをはじめ,ツツドリなどのトケン類の声もよく聞かれます。 ジュウイチの声は聞くことがあまりありせんが,昼間は鳴かないのだろうと勝手に思っておりました。 カメラのタイムスタンプで11:21分のことでした。あれっ「道の真ん中に黒い子ウサギが座っている!」家人が道の先に何かを見つけました。 その日は快晴で,東大台の周遊路を探鳥をしながら一巡りしていました。キョーンという鋭い鹿の声に驚いたりしますが, ゴジュウカラやカケス,キバシリなども順調に姿を見せてくれます。断崖で冷や汗を描いて,駐車場へ戻る帰り道に入りました。 うす暗い林ではオオルリやキビタキの囀りが聞こえますが,なかなか写真は撮らせてもらえません。 次の谷筋でミソサザイでも撮ろうかと,谷筋と谷筋の間の鞍部に差しかかったあたりです。遊歩道の真ん中に黒い子ウサギのようなものが見えました。 30m以上はあるので双眼鏡で覗くと,どうやら鳥のようです。とりあえず証拠写真を撮らなければ!と,手持ちのカメラで撮影しました。 見ていると,その鳥の周りを小さな黒い鳥が頻りに飛び回りますが暗くて何をしているのかよく分かりません。 写真を帰ってから現像してみても真っ暗でしたが,レタッチで無理矢理明るくしてみると,給餌しているように見えます。 数分してその小さな鳥が,すぐ上の枝に止まりました。ファインダーで覗くと何とルリビタキのオスです。 つづいて大きな鳥も枝に飛び移りました。 見ているとルリビタキが飛んできて給餌をしています。 自分の何倍もありそうなヒナに給餌をしている光景にビックリです。カッコウの托卵の巣立ちビナだ!とやっと分かりました。 あわてて撮影しているので,露出も合ってないしピントもブレブレです。(涙) 少しすると,どちらの鳥も右手の林の奥に飛んでしまいました。 そう遠くはなさそうだったので気持ちは急きましたが,チャントした写真を撮らないと話にもならないので, デジスコをセットして少し近付いてみました。ヒナの大写しはすべてデジスコセットでの撮影です。 ヒナしか見えませんでしたが案外近くて,今度はジックリと観察する事が出来ました。 時折,親鳥(ルリビタキ)が飛んできますが,動きが速すぎて,デジスコでは影しか見えません。 もっと遊歩道から離れた所へと誘導しているようですが,ヒナも直ぐには動けないようで,10分近くその枝にとどまっていました。 樹の上では後ろ向きで口の中は見れませんでしたが,羽毛の模様などもはっきりとに撮らせてくれました。 やがて,本当に森の奥へと飛んで行ってしまいましたが,観察中の40~50分の間に他の登山者が一人も通らなかったのは実に幸運でした。 当時,自身のブログにアップするさいに,鳥友さんにも調べていただきました。 カッコウ科の鳥が托卵する相手はほぼ決まっていて,ルリビタキに托卵する鳥はジュウイチでまず間違いないということでしたので, " ジュウイチのヒナ"として掲載しました。最近までそのままになっていて,すっかり忘れていたのですが,K氏からメールをいただき, " ツツドリのヒナ"ではないかとご指摘を受けました。お手数をお掛けして,いろいろ調べていただきました。 改めてお写真を見せていただき,カッコウ科のヒナの写真を比較してみました。 ジュウイチのヒナは腹部は白っぽく縦斑がまばらにあり,後頭部に白斑があります。観察したヒナは,全体に黒い羽毛に被われ。 頭部分の羽縁に白い縁取りがあり,口角の鮮やかな朱色が印象的です。以上からツツドリのヒナである事が確定しました。 ツツドリがルリビタキに托卵する例は非常に珍しいようです。また巣立ちにまでいたる観察例は無いとのことです。 肝心の給餌の場面がピンボケで情けない話ですが,当時の写真を整理しながら顚末を纏めてみました。 平成20年9月。
by aosagi56
| 2008-12-17 17:32
| 野鳥
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